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先輩薬剤師のメモ帳 保存版

小児処方のコツ③ 抗菌薬「胃腸炎による脱水や薬剤耐性から小児を守る服薬指導」杉原桂先生

先輩薬剤師のメモ帳 保存版

日本で1日約200万人に処方される抗菌薬、その90%が内服薬といわれています。多くの内服抗菌薬は風邪症状に対し処方されますが、2019年12月には厚生労働省から小児版の『抗微生物薬適正使用の手引き』第2版が公表されるなど、昨今多剤耐性菌の問題が注目されています。
「本当にその抗菌薬は必要か」「適正な薬剤を適正に服用することが大切」という意識を医師・薬剤師が共有し、患者さんへ適切に伝える必要があります。

このシリーズでは小児科専門医監修のもと、「先輩薬剤師が書き込んだメモ帳」からこれまで聞きたかったけれど聞けなかった疑問に答えます。

第1回 小児処方のコツ① 外用剤「“ステロイド外用薬”の服薬指導」杉原桂先生
第2回 小児処方のコツ② 感染対策「感染症が増える時期の服薬指導」杉原桂先生

今回は「小児処方のコツ」における抗菌薬から薬剤耐性をはじめとする注意点、そして夏と冬には特に増える感染性胃腸炎における服薬指導のポイントをご紹介します。

薬局に掲示できる「保存版」PDFを記事末尾に掲載しました。ご活用ください。

医療法人社団 緑風会 ユアクリニック秋葉原 理事長 杉原桂先生

抗菌薬使用でとにかく気をつけるのは「薬剤耐性」

抗菌薬は、強い、弱いと表現されることがよくあります。ネット上にランキングとして掲載されていることもあり、それだけを見て服用しなくなってしまう方もたくさんいらっしゃいます。しかし、処方された抗菌薬を飲む回数を減らしたり、途中で服薬を止めたりすると「薬剤耐性」を生じるリスクが上がります。
耐性菌を増やさないためにも、薬剤師の皆さんにはしっかりとした情報を伝えてほしいですね。

抗菌薬の適正使用にあたっては、“どの菌に効くか”ということが1番のポイントです。
本来、抗菌薬が選択されるときには原因菌を想定していますが、年齢や飲みやすさによって選択されてしまうときもあります。薬剤師として抗菌薬の“強さ”ではなく、どのような菌に使用されるのかをしっかり勉強しておきましょう。

また、抗菌薬について日本と世界の国々の考え方は大きく異なります。胃腸炎に用いられるホスミシンのように日本ではあたりまえのように使用されていても、外国では使用されないことも多くあります。
世界で起きている問題として、抗菌薬について一度考えてみてください。

ワクチン接種と適正使用に向けた正しい情報発信

内科で小児に抗菌薬が処方されるとき中心となる起炎菌は、肺炎球菌とA群溶血性レンサ球菌です。肺炎球菌は小児の場合多くが中耳炎の原因となり、致命度も後遺症率も高い肺炎球菌髄膜炎につながることもあるため、かつて多くの抗菌薬が使用されていました。一般的に溶連菌とよばれるA群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、多くの場合いわゆる風邪症状を訴え受診に至ります。この両者に使われるのがペニシリン系の抗菌薬で、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)の発生は本薬剤の使用に比例するといわれています。

一方ワクチン接種の波及に伴い、肺炎球菌髄膜炎は激減しました。

ワクチン接種と抗菌薬の適正使用は薬剤耐性問題の解決に向けた一歩になります。薬剤師として、抗菌薬の使い方とワクチン接種について質問されたときにしっかり答えられるようにしましょう。

小児に多い感染症と薬

小児に多い感染症と薬

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

原因:A群溶血性レンサ球菌
特徴:学童期(6~12歳)に最も多い
症状:突然の発熱、全身倦怠感、咽頭痛、嘔吐など
治療:ペニシリン系薬剤 アレルギーがある場合はエリスロマイシン

●いずれの抗菌薬も少なくとも10日間確実に服薬することが必要
●エリスロマイシン(マクロライド系)は薬剤耐性に注意

咽頭結膜炎

原因:アデノウイルス
特徴:学童期(6~12歳)の罹患が主 ※5歳以下が約6割
症状:発熱、頭痛、全身倦怠感、咽頭痛、結膜充血、眼痛、羞明など
治療:対症療法が中心

●ウイルス感染症には抗菌薬を使用しない
●感染症法:5類感染症 医療機関からの毎週報告
●学校保健法:第二種伝染病 主要症状消失後2日経過するまで出席停止

手足口病

原因:エンテロウイルス

●ウイルス感染症には抗菌薬を使用しない

感染性胃腸炎
    原因:
  • ・細菌 腸炎ビブリオ、病原性大腸炎、サルモネラ、カンピロバクター
  • ・ウイルス ノロウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルス
  • ・寄生虫 クリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛虫

治療:基本的に対症療法。一部細菌、寄生虫による感染の場合は抗菌薬、抗原虫薬

お父さんやお母さんへ服薬指導するときのポイント

抗菌薬だけでなく小さなお子さんにお薬を使うことに対して、不安な気持ちをもった親御さんはたくさんいらっしゃいます。
そのような感情をもった方には、まずは「共感」が大切です。そして「どうしてそう思うのか」を聞いてみましょう。
正しい使い方を伝えることで不安を取り除き「大丈夫ですよ」と伝えてあげられるようにしましょう♪

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保存版PDFをご用意しました。薬局などで服薬指導にご活用ください。
(下記画像をクリックするとPDFが開きます)

先輩薬剤師のメモ帳 保存版

<杉原先生が出演されているYouTube動画>
コロナ禍における「子どもの心理的影響と対策」について話されています。是非ご覧ください。

当記事は薬ゼミの薬剤師向け季刊誌「THINK CUBE」No.17(2021 SPRING)P.26、27へ掲載したものです。
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