医療現場で成長を志す薬剤師を応援するコミュニティサイト
薬ゼミラーニングトレイン

臨床薬学の常識 非常識

HOME > 一歩踏み込む「便秘指導」 ~患者さんのQOLを意識したケアのポイント~

臨床薬学の常識 非常識

一歩踏み込む「便秘指導」 ~患者さんのQOLを意識したケアのポイント~

当記事は当サイトへ2021年6月4日に掲載した記事の再掲載です。


便秘は、受診する前に薬局やドラッグストアで下剤を購入してセルフケアする方が多い疾患です。しかし、便秘の改善には生活習慣の見直しが必要であり、受診して治療することが必要な疾患が原因となっている場合もあります。
便秘を今一度学び、受診勧奨や生活指導など「適切な介入ができる薬剤師」を目指しましょう。

常識 非常識

三谷徳昭先生
三谷徳昭先生
治療における薬剤師の役割は3点です。

・便秘の原因をしっかり把握する
・受診が必要かセルフケアで対応できるかを見極め、薬剤性のケースは薬剤師がキャッチする
・間違ったセルフケアにならないようサポートする

患者さんのため、適切に介入できる薬剤師を目指しましょう。

便秘とは?「本来体外に出すべき糞便を十分量かつ快適に排泄できない状態」1)

たかが便秘と考えがちですが、患者さんのQOLに大きく影響します。下剤を服用して排便回数が増えればよいわけではなく、検査や治療が必要な場合もあります。便秘の相談を受けた際は、患者さんからその状態をしっかり聞きとり、見極め、適切な対応ができるようにしましょう。

Step1 便秘の原因を探る

1. 便秘の分類

患者さんから、十分に情報収集することが大切です。

便秘の分類

三谷徳昭先生
三谷徳昭先生
薬剤性の便秘に気づかず、漫然と下剤が処方されていないでしょうか?

器質性の便秘は、重大な疾患が原因のことも。

受診勧奨し、後日受診の有無、検査・診断の結果を確認しましょう。

2. 便秘の原因となる薬や疾患

便秘の相談を受けたら、薬や疾患の影響を視野に入れ、必ず服用中の薬を確認しましょう。

便秘の原因になりやすい薬

薬剤便秘をきたす機序
抗コリン薬消化管運動や腸液分泌抑制
向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬)抗コリン作用に伴う消化管運動や腸液分泌抑制
抗パーキンソン薬抗コリン作用に伴う消化管運動や腸液分泌抑制
中枢神経系ドパミン活性の増加やアセチルコリン活性の低下
オピオイド消化管からの消化酵素の分泌抑制。蠕動運動抑制
セロトニンの遊離促進作用
抗がん剤(植物アルカロイド、タキサン系)末梢神経障害と自律神経障害
カルシウム拮抗薬Caの細胞内流入の抑制に伴う平滑筋弛緩
利尿薬電解質異常に伴う腸管運動低下。体内の水分排出促進
制酸薬消化管運動抑制
鉄剤・カルシウム製剤消化管運動抑制
吸着薬・陰イオン交換樹脂消化管運動抑制
制吐薬5-HT3受容体拮抗作用
止瀉薬末梢性オピオイド受容体刺激

便秘になりやすい疾患

分類原因となる疾患の具体例
神経疾患パーキンソン病、脳血管障害、多発性硬化症、認知症、脊髄障害、自律神経障害など
内分泌代謝性疾患糖尿病、甲状腺機能低下症、電解質異常、アミロイドーシスなど
直腸の器質的疾患裂肛、痔核、直腸脱、直腸瘤
その他の疾患筋ジストロフィーなどの筋疾患、膠原病、慢性腎不全、精神疾患

Step2 患者さんの状態を確認してアドバイス

1. ブリストルスケール

どんな便が理想か? 「ブリストルスケール」は患者さんや医療・介護職との連携において共通言語となるため、覚えておきましょう。

ブリストルスケール

三谷徳昭先生
三谷徳昭先生
私はいつも、ポケットに「ブリストルスケール」を入れています。

2. 排便パターンの作り方

食事ももちろん大事だけれど、ちょっとした行動変容のコツを伝えましょう。

  • ・便意を感じたら、必ずトイレに行く
  • ・1日2回、食後30分を目安に、便意の有無に関わらずトイレに5分間座る
  • ・継続しやすい運動の勧め
    腹筋や骨盤底筋群を鍛える⇒階段の上り下り。肛門にギュッと力を入れる習慣づくり
  •  運動の効用:腸が刺激され、滞っていた腸の内容物が動きます。
    運動後は副交感神経が優位になり、大腸が活発に動き出します
三谷徳昭先生
三谷徳昭先生
快便な人は、毎日同じ時間に排便できているらしいです。
運動をするのは、大腸運動が亢進している「朝」がオススメです。

3. 排便時の姿勢

排便時の姿勢

正しい排便姿勢をわかりやすく伝えられるリーフレット(三谷先生提供)

※画像をクリックすると、Google Driveにて印刷できるPDFファイルが開きます

正しい排便姿勢リーフレット

【参考出典】

  • 1) 慢性便秘ガイドライン2017(日本医事新報社)
  • 2) かかりつけ医のための便秘・便失禁診療Q&A(日本医事新報社)
  • 3) 薬剤師のための症候学(慶応義塾大学出版会)
  • 4) プライマリ・ケアに活かす薬局トリアージ(じほう)
  • 5) WOC Nursing(Vol.8,No.1 医学出版)
  • 6) 現場がいきいき動き出す 必携実務ノート(薬ゼミファーマブック)


薬ゼミ生涯学習センターは2021年6月20日(日)に、当記事のファシリテーターである三谷徳昭先生(ミライ☆在宅委員会 委員長/パル薬局 在宅部長)を講師に迎えた講座「症例から学ぶ排泄ケア ~便秘と頻尿~」を実施しました。
実施レポートはこちらからご覧ください。

当記事は薬ゼミの薬剤師向け季刊誌「THINK CUBE」No.17(2021 SPRING)P.12~15へ掲載した記事の一部です。

トップに戻る



臨床薬学の常識 非常識

臨床薬学の常識 非常識

一歩踏み込む「便秘指導」 ~患者さんのQOLを意識したケアのポイント~

臨床薬学の常識 非常識を掲載しました。

楽しむ
Facebook
Facebook
Twitter
Twitter
LINE「薬学ゼミナール」
友だち追加
生涯学習のラーニングトレイン
薬剤師 生涯学習
生涯学習センター
薬ゼミファーマブック
ファーマブック

Ph-Portは薬剤師向けの旬な話題や役に立つ情報をお届けする
薬剤師のための総合情報サイトです。

このほかにも様々な記事の掲載や、会員の皆様の交流の場としまして掲示板を開設しています。
会員登録して様々なコンテンツをお楽しみください。

会員登録