ワークでウェルビーイングを感じると起こること

コロナ禍で働き方改革が進み、企業ではテレワークを中心にした在宅ワークが増え、ワーケーションも行われるようになりました。働き方改革のなかで、後述する「パーパス経営」や「従業員のウェルビーイング（Well-being、幸福度）」が注目されています。

現代は多様な世代が共に働き、価値観もさまざまです。終身雇用から転職が当たり前へと変わり、好きな環境で働くことが選べる時代になってきました。

個人が働く場所や働き方を考えるとき、ライフ、つまり生き方と切り離せなくなっています。働き方だけをとらえるのではなくて、自分の「ライフ＝人生」の中で、「ワーク＝働くこと」について、視野を広げ視座を高めて、どんなふうにデザインしていくのか、この視点が求められています。

企業の側では、「企業が何を目的に存在しているのか、何を目指し、何で社会に貢献するのか」というパーパス（目的）を掲げるパーパス経営が広がっています。企業全体と従業員の一人ひとりが目的を認識し、その目的のために自分の所属する組織、そして自分自身は何のために存在し何のために活動しているのかを考えて行動します。

パーパスが企業―組織―個人レベルを結びつけていくわけです。

この結びつきが強まると、従業員一人ひとりの自己受容、他者信頼、所属感、貢献感が満たされウェルビーイングを感じ、行動する勇気があふれてきます。

その結果、次のようなよいことが起きると、ギャロップ社の調査をはじめ、さまざまな調査で示されています。

患者さんに適切に対応するには、医療者のウェルビーイングが重要

医療は、パーパスが明確です。患者さんの疾病からの回復、生命の維持、健康を保ち増進するなどのために存在しており、組織―個人の役割が明確です。

特筆すべきことは、医療を行ったほとんどの場合に、患者さんから「ありがとうございます」と感謝の言葉が返ってくること。患者さんからの感謝が医療者のウェルビーイングを感じやすくしています。

医療者は使命感が高く、そして患者さんからの感謝の言葉が返ってくるがゆえに、自己を犠牲にして働く傾向があります。これが医療者の長時間労働につながり、健康に奉仕する医療者の健康を害するリスクにもなってしまいます。

そのため、医療者のワークライフバランスやウェルビーイングが重要視され、患者さんに適切に対応するために医療者のウェルビーイングを高めることが必要と考えられるようになりました。東北大学病院のウェルビーイング宣言など、ウェルビーイングへの取組みを表明する医療機関が現れています。

働き方改革で変わる医療者の働き方

医療のなかでの働き方改革に関しては、患者さんが医療機関や在宅で医療を受けるため仕事のやり方はあまり変わらないものの、オンライン診療が始まり、在宅医療は一層進んできています。医療従事者の長時間労働も課題となり、タスクシフティング（役割分担の推進）が今後も進むことは間違いありません。必然として、働き方は変わってくるでしょう。

薬剤師もオンライン服薬指導が始まりました。在宅患者を訪問して薬学的管理指導を行う機会も増えてきました。薬剤師の業務は、薬というモノ中心の対物業務から、患者さんなどヒトへの対人業務へシフトし始めました。働き方が大きく変わってきています。

明らかではない薬剤師のウェルビーイング

薬剤師の対人業務が増えると、患者さんから感謝の言葉を受ける機会が増加し、やりがいが増えてきます。

その一方で、モノと違ってヒトはさまざまな個性をもち反応がさまざまですから、ときに患者さんが感情的な反応をすることもあります。ポリファーマシーの薬剤評価調整などでは、医師とのコミュニケーション機会も増えます。このような対人業務でストレスを感じる機会が増えていると聞きます。

薬剤師は、医師や看護師と比べると、薬局や病院以外のさまざまな職場で働く機会があります。企業から薬局への転職や、育児が落ち着いた後の再就職など、さまざまなバックグラウンドを持った人が同じ薬局内で働いていることも少なくありません。それぞれのライフ（人生）の中で、ワーク（働くこと）をデザインしている人が少なくないと感じています。

ライフとワークをデザインする中で、やりがい・生きがいを感じて仕事を行っている人もいますが、一方で、ワークあるいはライフにストレスを感じている人もいます。

しかしながら、薬剤師のウェルビーイング（幸福度）が、コロナ禍の社会環境の変化や対人業務が増える働き方の変化のなかで、どのようになっているか、実態は明らかではありません。

薬剤師のウェルビーイング実態調査へのご協力のお願い

日本経済大学経営学部ファーマシーマネジメント研究所では、薬剤師Well-being調査（倫理審査委員会承認済）を行っています。この研究にご協力いただける薬剤師の方を募集しています。調査に個人情報の入力はありません。総合的に解析され論文発表などに用います。調査の趣旨をご理解いただき、ぜひご協力いただけますよう、お願いいたします。

菊岡正芳（きくおかまさよし）
合同会社Kiku塾・代表、一般社団法人日本リーダーコーチ協会・代表理事、日本経済大学経営学部ファーマシーマネジメント研究所・研究員、薬剤師、キャリアコンサルタント２級技能士。大手製薬（内資・外資）・臨床検査会社にて、マーケティング・セールス・人材開発部門長を歴任。聴く力で「聞けない菊岡さん」が「聴ける菊岡さん」に変わり組織力向上を実体験。聴く力を高めて輝く人・モノ・サービスをつくる事業を行う。

・合同会社Kiku塾　info@kiku-juku.com　https://kiku-juku.com/
・一般社団法人日本リーダーコーチ協会　https://leadercoach.or.jp/
・YouTube「聴く力を高めて、輝く人・モノ・サービスを創る」 https://www.youtube.com/channel/UCYHrGO5jbmzANCopHv9XuEw