医療現場で成長を志す薬剤師を応援するコミュニティサイト
薬ゼミラーニングトレイン

学ぶ

HOME > 行動変容ステージに応じた効果的な患者支援

行動変容

行動変容ステージに応じた効果的な患者支援
~「あれだけ言ったのに・・・」とつぶやく前に~

行動変容ステージに応じた効果的な患者支援

学習ポイント

薬学ゼミナール生涯学習センター講座 超デキるかかりつけ薬剤師プログラム e-learningカリキュラム「行動変容」の復習テキストを、阪本先生のご厚意により特別に公開します。

行動変容理論と実際の行動変容サポート

事例1
35歳男性。妻の買い物につきあっている途中で薬局の禁煙のポスターに目を止めていた。薬剤師からタバコについて話題にしたところ、「・・・タバコ。やっぱ、やめたほうがいいっすよね」と自信のなさそうな声で男性はつぶやいた
家族歴:父:2年前に心筋梗塞で死亡
既往歴:なし、会社の健康診断で胸部X線異常を指摘され受診。精査で異常がないことが確認されている。
喫煙歴:18歳からタバコ20本/日

【はじめに】
行動変容とは、これまで培われてきた行動パターンをより望ましいものへと変えてゆくことをいう。
 対象者へ健康情報を伝える方法として、例えば、糖尿病患者に対し、合併症の恐ろしさを強調するような恐怖喚起型健康教育や骨粗鬆症対策にカルシウムの多い食品の一覧を見せて指導する知識伝達型健康教育などがあるが、これのみでは、なかなか行動変容は促せない1)ことは、薬剤師の多くが経験済みではないだろうか?
 なぜなら、対象者の準備状態(後述する変化のステージ、既存の知識レベル、障害に感じていること)を考慮せず、画一的に健康情報を提供した場合、対象者は自分の問題として咀嚼することが難しいからだ。そこで、本講座※1では、対象者を中心に据え、行動変容のステージを踏まえたアプローチを行い、対象者の行動変容を支援出来ることを学習目標にして、講義を行った。
 本書は、復習用テキストである。講義時間の関係から取り上げられなかった内容も、このテキストで紹介したので、ぜひ活用してもらいたい。

※1:薬学ゼミナール生涯学習センター講座:超デキるかかりつけ薬剤師プログラムe-learningカリキュラム「行動変容」

【変化のステージモデル(Transtheoretical Model(Prochaska2)))】
 行動変容の過程は、無関心期、関心期、準備期、行動期、維持期の各ステージを経て、確立期に至るとされている(図1)。
 段階ごとに対象者の考え方は変化しており、それぞれのステージで行動変容に至るための課題がある。そのため、対象者の問題となる行動に対する考え方や期待(解釈モデル)を理解する必要がある。
 そこで、薬剤師が対象者を支援する際には、対象者が行動変容のどのステージにいるかを判断することで、そのステージに合わせた適切なアプローチを取ることができる。ステージ評価には、「いつから○○をはじめようと思いますか?」という問いかけがよく用いられる。

図1いつから○○を始めようと思いますか?

【健康信念モデル Health Belief Model(Rosenstock,Becker3))】
 行動変容が起こるには、1.罹患性(「このままでは病気や合併症が本当に自分に起こる可能性が高い」と感じる)と2.重大性(「それによってもたらされる結果は自分にとって重大である」と感じる)の両方が高まって初めて脅威(危機感)が高まり、行動を変えなければという思いが強くなる。そして「行動を変えることの有益性が、それに伴う様々な障害を上回る」と感じることで、行動変容が起こる。さらに“きっかけ”は行動を起こす後押しをしてくれる(図2)。

図2 健康信念モデルの概念図

【自己効力感 Self-efficacy(Bandura)】
 変化させるのに必要な行動を行う自分の能力についての信念・感覚のことをいう。つまり“自己効力感が高い”とは、「これなら自分にできる!」という感じが高いことをいう(図3)。
 では、「自分は、その行動をうまくやることができるんだ」という自己効力感は、どこから生まれるのだろうか。それには、以下の4つの要素が考えられている(表1)。

図3 社会的認知理論

表1 自己効力感を高める4つの要素

後編へ続く

講師略歴
阪本 直人(さかもと なおと)
関西出身。2001年愛知医科大学卒。星ヶ丘厚生年金病院(現:星ヶ丘医療センター(大阪))で初期研修、亀田メディカルセンター(千葉)で家庭医後期専門研修を受ける。亀田ファミリークリニック館山の創設に関わり、同初代医長を経て、2008年 筑波大学(茨城)総合診療グループへ移籍。2009年より同大学院 地域医療教育学 講師となり、現在に至る。日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医・指導医・代議員。日本ヘルスプロモーション学会 常任理事・評議員。サブスペシャリティーは、ヘルスプロモーション、ヘルスコミュニケーション。研究テーマは、ヘルスリテラシー。詳しくは、『つくば 総合診療』で検索。

トップに戻る



行動変容
スーパーテキスト

行動変容ステージに応じた効果的な患者支援

行動変容ステージに応じた効果的な患者支援(後編)

~「あれだけ言ったのに・・・」とつぶやく前に~

学ぶ
行動変容

行動変容ステージに応じた効果的な患者支援(前編)

ステージに応じた効果的な患者支援

学ぶ
Facebook
Facebook
Twitter
Twitter
LINE「薬学ゼミナール」
友だち追加
生涯学習のラーニングトレイン
薬剤師 生涯学習
生涯学習センター
薬ゼミファーマブック
ファーマブック

Ph-Portは薬剤師向けの旬な話題や役に立つ情報をお届けする
薬剤師のための総合情報サイトです。

このほかにも様々な記事の掲載や、会員の皆様の交流の場としまして掲示板を開設しています。
会員登録して様々なコンテンツをお楽しみください。

会員登録