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がん専門医療人を養成する阪大がんプロ事業とは?

「日本人の3人に1人が亡くなっている」といわれ、国民病ともよばれる「がん」。皆さんの働く医療現場でも、がん患者さんと出会わない日はないかもしれません。
そんな「がん」を集学的・横断的に診療できる専門職を養成するために開始されたのが「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン事業」(以下がんプロ事業)です。
今回は大阪大学を拠点とするがんプロ事業(以下阪大がんプロ事業)のインテンシブコース責任者の天野富美夫先生と2021年度コース担当者の井尻好雄先生に、がん医療における薬剤師の役割やがんプロ事業の活動についてお話を伺いました。

天野 富美夫先生

天野 富美夫先生
大阪大学大学院医学系 招聘教授
国立医薬品食品衛生研究所客員研究員
岡崎薬局薬剤師

1975年 東京大学薬学部薬学科卒業
1980年 博士(薬学)東京大学
1980年 国立予防衛生研究所(国立感染症研究所)研究員
2001年 大阪薬科大学 教授
2018年 株式会社スギ薬局 顧問
2020年 岡崎薬局 薬剤師

井尻 好雄先生

井尻 好雄先生
大阪医科薬科大学薬学部 准教授


1981年 大阪薬科大学薬学部製薬学科卒業
1981年 大阪医科大学附属病院薬剤部
2004年 博士(薬学)大阪薬科大学
2006年 大阪薬科大学 助教授
2021年 大阪医科薬科大学 准教授

がん医療の歩みとがんプロ事業

がんは1981年(昭和56年)に日本人の死因第一位の疾患となって以降、トップを独走し続けています。
がんは国民の生命及び健康にとって重大な問題とされ、2007年(平成19年)4月には「がん対策基本法」が施行されました。

がん対策基本法に基づき、2007年(平成19年)6月には「がん対策推進基本計画」が策定。
この基本計画はがん対策の基本的方向について定め、都道府県がん対策推進計画の基本となることを目的とし、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るために始まりました。

がん対策推進基本計画の目標
「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」の実現を目指す

天野先生
天野先生
一番問題だったのは「がん医療の均てん化」ができていなかったことです。

国民皆保険でありながら、地域間の格差や制度の問題で、皆が公平に質の高い医療を同様に受けられる状態ではありませんでした。

また、医療者同士が専門知識を持ち寄って治療方針を話し合うようなシステムがなかったため、情報の共有や意思の疎通が上手くできていませんでした。
がん医療を担う医療人を急速に養成して、均てん化と高度化を進める必要があったのです。

「がん医療の均てん化」と「がん医療を担う人材の養成」が急務として求められる中で、文部科学省はがん医療に携わるがん専門医療人を養成する大学の取組みを支援する事業として、がんプロ事業を開始しました。
対象となる職種は医師、薬剤師、看護師をはじめとする医療者並びに医療技術者など各種の専門職で、拠点となる大学と連携する近隣の大学で成り立っています。

各職種が専門性を磨くだけでなく、互いに参画し、チームとして機能できるようになることが目標とされ、第1期から第3期までそれぞれテーマを設定しながら実施されてきました。

がんプロ事業のテーマ
第1期(2007年度~2011年度)
がんプロフェッショナル養成プラン

第2期(2012年度~2016年度)
がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン

第3期(2017年度~2021年度)
多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)」養成プラン

15年間の活動により多くの成果や取組みが報告されていますが、その中でも特に、日本のがん医療で不十分とされてきた放射線療法、化学療法、緩和医療等に関する専門資格取得に特化した大学院教育コースが全国的に設置され、日本のがん専門医療人の教育システムが変革したことは大きな成果といわれています。

また、この成果によりがんの教育・研究・診断と治療がさらに大きく向上することが期待されます。

天野先生
天野先生
がん医療の地域格差、医療人材の不足、がんの早期発見・早期治療の推進、先進的な治療方法の開発、死亡数の低減などについて進歩があったと思います。

ただ、がん医療の向上で増加したがんのサバイバーへの対策はいまだ十分とはいえず、がん患者の社会復帰を含め、日常に戻った後の生活には多くの課題が残されています。

さらに、小児がんや希少がんについての理解や患者対応、ゲノム診断と治療に関する医療体制の整備はまだ十分とはいえません。

がん医療における薬剤師の役割

ところで、がん医療において、薬剤師はどのような職能をもつのでしょうか。

がん治療の基本は、手術療法、放射線療法、薬物療法の三大療法です。
また、その治療を組み合わせる集学的治療、苦痛に対応する緩和ケア、薬物療法の副作用対応の支持療法、局所療法である内視鏡治療や画像下治療などがあげられます。

がんの治療には医師、看護師、放射線技師など多くの職種が関わっていますが、薬剤師が特に能力を発揮するのは、集学的治療だといいます。

天野先生
天野先生
薬剤師は治療方法の組み合わせがあるとき、大変役に立ちます。

また、麻薬などを使う緩和ケアでも、痛みをとるだけでなく血圧のコントロールや眠りの管理など、オールマイティに活躍できると思います。

がん専門薬剤師の役割

集学的治療というと、病院薬剤師や研究に関わる薬剤師のイメージが強いかもしれません。
しかし、薬局や在宅で働く薬剤師も、がんのサバイバーに対する治療薬の投与や服薬指導において、病院の医師・薬剤師・看護師などの多職種との連携や患者さんの日々の生活の経過を観察していくことが不可欠です。

外来化学療法センターが整備され、入院せずに治療を受けている患者さんが増加したことに伴い、薬剤師が活躍する機会がさらに増えているといいます。

天野先生
天野先生
街の薬局では、がんのサバイバーに対するがん治療薬の投与や服薬指導において、他の医薬品との飲み合わせの指導や相談、副作用の発現のチェック、さらに食事の内容・運動をはじめとした日常生活の相談など、入院中よりも多彩で細やかな対応が必要です。

また、適宜主治医や医療機関と連絡をとるなど、他の職種との連携にも力を発揮できますよね。

日々進歩していくがん医療について薬剤師が専門性を高めることは、患者さんやその家族への情報提供、医療者間での情報共有、治療方針の決定などにつながり、さらには新たな治療法や薬剤を生み出す可能性も秘めていると考えられます。
患者さんや家族がさまざまな治療法の中から納得して治療を選択することの大切さは広く知られていますが、治療を安全に、安心して継続していく上で薬剤師も大きな役割を担っているといえるでしょう。

がん医療の専門性を高めたいと考える薬剤師におすすめしたいのが、阪大がんプロ事業です。

阪大がんプロ事業とは

関西のがんプロ事業は京都大学・近畿大学・大阪大学の3つの拠点から成り立っています。
関西には多くの医療系大学が存在しており、拠点間の連携や協力体制を築きやすい特色があります。

全国と比較して、がん死亡率が高いといわれる関西で、この3つの拠点が互いに特徴あるテーマと体制で活動を行っています。その中で阪大がんプロ事業の目指す目標は、「多職種間の連携で治療成績の向上と患者QOLの改善」です。

阪大がんプロ事業は大阪大学を拠点とし、京都府立医科大学、奈良県立医科大学、兵庫県立大学、和歌山県立医科大学、大阪薬科大学(現:大阪医科薬科大学)、神戸薬科大学の7大学から構成されています。

阪大がんプロ事業の取組みと目標

また、7大学と附属病院だけでなく、大阪国際がんセンターなどのがん診療連携拠点病院、大阪母子医療センターなどの小児がん拠点病院・全国がんセンター協議会加盟施設とも連携しているほか、がん教育研究支援センターやオンコロジーセンターも設置しており、一貫したがん教育が受けられる環境が揃っています。

また、がん専門薬剤師を養成するプログラムもあり、がん医療に関わりたい薬剤師にとって最適の学びの場だといえるでしょう。

阪大がんプロ事業で開設しているコース
●がん医療専門医養成コース
各診療科の基盤学会の認定医・専門医資格の取得を目指す医師を対象とし、4年間で専門医資格と学位取得を目指すコース

●がん専門医療スタッフ養成コース
医療専門職(がん看護専門看護師、がん専門薬剤師、医学物理士、細胞検査士)の養成を目指すコース

●インテンシブコース
さまざまな医療職を対象に、がん診療レベルの向上を目的としたコース

阪大がんプロ事業で開設している3つのコースの中で特に、天野先生が責任者を務めるインテンシブコースは、働きながら学習をしたいと考えている社会人薬剤師にはおすすめだといいます。

井尻先生
井尻先生
阪大がんプロ事業に所属する薬系の大学(薬科大学が2大学と大阪大学薬学部)で、「薬剤師のためのインテンシブコース」を開設しておりますが、本コースがあるのは阪大がんプロ事業の強みだと思っています。

本コースの対象は『大学院はハードルが高いけれど、もっと「がん」のことを勉強したい』という思いのある薬剤師です。
天野先生
天野先生
インテンシブコースは大学院に入学して籍を置かなくていいので、講義を受けたいときに受けられます。

仕事が忙しくて大学院に進学できない人たちにとっても、勉強したいと思い立ったときに役に立つと思います。

阪大がんプロ事業の今後の展望

新型コロナウイルス感染症の拡大により、交流会や研修会など、学びの機会が得にくい現状ですが、がん医療の必要性は高まる一方であり、より高度な専門性をもつ医療人材の養成は急務となっています。

阪大がんプロ事業では今後、がんのサバイバーへの対策や希少がんについての教育、ゲノム診断と治療に関する医療体制の整備など、現状の課題解決だけにとどまらず、未来を担う人材の育成も視野に入れ、小中高生を対象としたがん教育の充実を図っていきたいとしています。

また、患者さん一人ひとりにあわせた対応ができるよう、医療者に対する教育方法を見出していきたいと考えているそうです。

天野先生
天野先生
大学を出るまでが教育ではなく、大学を出た後が本当の教育です。

薬剤師も医療人として、がんの治療を続けている人、がんが治った人などさまざまな人のバックグラウンドを理解して関わっていけるようになってほしいと思っています。

また、次の世代の教育に関わる人たちにもよい影響があることを願って活動しています。

国民病ともよばれるがんですが、「がん」と診断された患者さんや家族の不安は計り知れません。
薬剤師として専門性を高め続けることは、大きな価値をもつといえるでしょう。

参考文献
多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)」養成プラン
ゲノム世代高度がん専門医療人の養成
https://sahswww.med.osaka-u.ac.jp/~osaka-osaka_ganpro/

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