薬物治療の個別最適化
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薬物治療の個別最適化
[外来患者]味を考慮した吸入剤変更提案により、高齢者の過量服薬を回避した症例
本シリーズでは、薬物治療の個別最適化を行った事例を紹介していきます。
[外来患者]味を考慮した吸入剤変更提案により、高齢者の過量服薬を回避した症例
今回の症例
72歳・女性、喘息の患者さん。10年前に風邪をこじらせて咳が続き、息苦しさや、息を吐くときにヒューヒューと鳴るようになって受診したところ、気管支喘息と診断されました。その後、定期的な受診はしていませんでしたが、昨年の冬から4ヶ月の間に徐々に症状が悪化し、昨日受診し数年ぶりに吸入剤が処方されました。お薬手帳からは以前に処方されたという吸入剤の種類は確認できませんでした。
そこで、吸入剤については、デモ用の吸入デバイス(練習用吸入器)と添付されている患者用指導箋を用いて使用方法を説明しました。
ところが、投薬した次の日に、処方された吸入剤を持参して再来局し「吸えているのか、吸えていないのかさっぱりわからない」とのこと。吸入剤のカウンターを確認すると、既に「0」になっていました。
処 方)
Rp 1 | ブデホル吸入粉末剤*130吸入 | 1本 |
---|---|---|
1回2吸入 1日2回 | ||
Rp 2 | プランルカスト錠225 mg | 1回1錠(1日2錠) |
1日2回 朝夕食後 7日分 |
薬剤師が解決したプロブレム
# 吸入剤使用方法の理解不足による過量吸入のおそれ
ブデホル吸入粉末剤30吸入は、ほとんど味がしません。この患者さんは高齢者ということもあり、吸っている実感がなく、何度も吸ってしまいました。そこで医師に疑義照会を行い、レルベア吸入用への処方変更を提案し、採択されました。その後、レルベア吸入用にて吸入を継続し症状は改善されています。
今回の薬歴
# 吸入剤使用方法の理解不足による過量吸入のおそれ
- S 吸入剤が吸えたかどうかわからない。使用について不安がある。
- O 1日でカウンターがゼロになっていた。
- A 使用方法が理解できていない。喘息の悪化の可能性、過度の使用による循環器等副作用発現の可能性あり。
- P 正しく使用できそうな吸入剤への処方提案。
採択されたため、変更後の吸入剤の吸入手技を指導し、正しい手順で吸入ができるかを確認。
実務実習生の疑問に答える
Q1 成人の標準的な喘息治療法は?
喘息の標準的な治療としては、重症度に応じて軽症間欠型相当のステップ1から重症持続型相当のステップ4まで段階的に実施されます。ステップ1ではICS(吸入ステロイド薬)の低用量あるいはLTRA(ロイコトリエン受容体拮抗薬)やテオフィリン徐放製剤の内服が用いられます。軽症持続型相当のステップ2では、ICSの低用量とLABA(長時間作用性β2刺激薬)の併用が推奨されます。この患者さんは、中等症持続型相当の治療ステップ3と推察され、ICS+LABA配合吸入剤の中用量とLTRAが投与されました。ステップ3以上はICS+LABA+LAMA(長時間作用性抗コリン薬)のトリプル配合吸入剤や生物学的製剤の在宅自己注射などの使用が考慮されます*1。
Q2 2つの吸入剤の違いは?
臨床の現場では、成分の特性のほか、吸入デバイスの特性に基づいた使いやすさを優先する場合があります。
ブデホル吸入粉末剤は、デバイスがコンパクト、乳糖が少なく咳惹起が少ない、発作時頓用の適応もある、操作がやや複雑という特徴があります。この患者さんでは、ブデホル吸入粉末剤は刺激が少ないことから逆に吸入できたかどうかわからないという点、理解力が低下して適正な使用が難しいという点が考えられました。
一方、レルベア吸入用のデバイスのエリプタは、デバイスが大きくかつ操作がシンプル、乳糖が多く咳が惹起されやすいが逆に吸入を実感できるという特徴があります。
Q3 調剤報酬における吸入薬指導加算とは?
保険薬剤師が、喘息や慢性閉塞性肺疾患の患者さんを対象に、文書や練習用吸入器等を使って吸入手技を指導、正しい手順で吸入ができているかなど確認した場合に算定できます。
富士見台調剤薬局・専務取締役、帝京大学薬学部薬学教育推進センター・教授、薬剤師・薬学博士(薬理学)・臨床検査技師・医薬品情報専門薬剤師。
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