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薬物治療の個別最適化

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薬物治療の個別最適化

[入院患者]薬剤師間連携により、潜在性甲状腺機能低下症の疑いや口腔内副作用を解決した症例-長崎病院

薬物治療の個別最適化

本シリーズでは、薬物治療の個別最適化を行った事例を紹介していきます。

[入院患者]薬剤師間連携により、潜在性甲状腺機能低下症の疑いや口腔内副作用を解決した症例-長崎病院

今回の症例

急性期病院で左大腿骨転子部骨折にて手術を受けた85歳・男性の患者さんが、リハビリ・加療目的にて当院に転院しました。

転院元の薬剤師からは「転院時フォローアップ依頼書」で、「潜在性甲状腺機能低下症の疑いがあるため、TSH、FT4の採血検査依頼。一過性でなければ、治療導入の検討依頼」という連絡を受けました。

同時に、「術前歯科口腔外科受診の際、抜歯適応の歯が多数あるものの、患者さんは抜歯を希望されなかったため、口腔内フォロー」の依頼もあり、入院中に観察を行いました。

入院時処方)

Rp 1アスピリン腸溶錠100 mg 1回1錠(1日1錠)
タムスロシン塩酸塩OD錠0.2 mg 1回1錠(1日1錠)
ジスチグミン臭化物錠5 mg 1回1錠(1日1錠)
ニフェジピンCR錠40 mg 1回1錠(1日1錠)
 1日1回 朝食後
Rp 2プラバスタチンナトリウム錠10 mg1回0.5錠(1日0.5錠)
エソメプラゾールマグネシウム水和物カプセル20 mg1回1カプセル(1日1カプセル)
 1日1回 夕食後
Rp 3モサプリドクエン酸塩錠5 mg1回1錠(1日3錠)
酸化マグネシウム錠500 mg1回1錠(1日3錠)
 1日3回 毎食後
Rp 4バルプロ酸ナトリウム徐放錠100 mg1回1錠(1日2錠)
 1日2回 朝夕食後
Rp 5センノシド錠12 mg1回1錠(1日1錠)
 1日1回 就寝前
Rp 6アレンドロン酸ナトリウム水和物ゼリー35 mg1回1包(1日1包)
 1日1回 起床時 週に1回 木曜日

薬剤師が解決したプロブレム

#1 潜在性甲状腺機能低下症の疑い
#2 口腔内副作用

転院元の薬剤師からの「転院時フォローアップ依頼書」を確認し、入院時に主治医へフォロー依頼内容である甲状腺機能の精査、採血検査を依頼しました。(なお、整形外科医師からの診療情報提供書には、甲状腺機能低下症に関する記載はありませんでした。)

入院時検査値)
 eGFR 73 mL/min/1.73 m2、Mg 2.37mg/dL、バルプロ酸血中濃度 38.0 μg/mL
 TSH 8.07 μU/mL、FT4 0.99 ng/mL、
 抗TPO抗体 陰性、抗サイログロブリン抗体 陰性

2か月後検査値)
 TSH 10.65 μU/mL、FT4 0.88 ng/mL

抗TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)、抗サイログロブリン抗体は陰性でしたが、2か月後もTSH高値継続(TSH基準値:0.2~4.0 μU/mL)のため、レボチロキシンナトリウム水和物12.5 μg/日(朝食後)が開始となりました。

また、服薬指導時、歯痛の訴えがありました。主治医へ報告するとともに、自宅退院が近いため、MRONJ(薬剤関連顎骨壊死)に関連する歯痛の可能性や今後の歯科治療時のMRONJ発生のリスクが考えられることから、服用されていたアレンドロン酸ナトリウム水和物錠からエルデカルシトールカプセル0.75 μg/日(朝食後)への変更を主治医へ提案し採択されました。患者さんには、かかりつけの歯科があるとのことなので、早々の受診を勧めました。

退院時処方:入院から2か月後) ※青字は薬剤師の介入による変更箇所

Rp 1アスピリン腸溶錠100 mg 1回1錠(1日1錠)
タムスロシン塩酸塩OD錠0.2 mg 1回1錠(1日1錠)
ジスチグミン臭化物錠5 mg 1回1錠(1日1錠)
ニフェジピンCR錠20 mg 1回1錠(1日1錠)
プラバスタチンナトリウム錠5 mg 1回1錠(1日1錠)
エソメプラゾールマグネシウム水和物カプセル20 mg 1回1カプセル(1日1カプセル)
レボチロキシンナトリウム錠25 μg 1回0.5錠(1日0.5錠)
エルデカルシトールカプセル0.75 μg 1回1カプセル(1日1カプセル)
 1日1回 朝食後
Rp 2バルプロ酸ナトリウム徐放錠100 mg1回1錠(1日2錠)
酸化マグネシウム錠500 mg1回1錠(1日2錠
 1日2回 朝夕食後
Rp 3センノシド錠12 mg1回1錠(1日1錠)
 1日1回 夕食後

※入院時処方からの変更内容

  • ・ニフェジピンCR錠は40 mg⇒20 mgへ減量
  • ・プラバスタチンナトリウム錠は夕食後10 mg 0.5錠⇒朝食後5 mg 1錠に変更
  • ・エソメプラゾールマグネシウム水和物カプセルは夕食後⇒朝食後に変更
  • ・モサプリドクエン酸塩錠は中止
  • ・酸化マグネシウム錠500 mgは1日3回⇒1日2回へ減量
  • ・センノシド錠は就寝前⇒夕食後へ変更
  • ・アレンドロン酸ナトリウム水和物ゼリー(週1回製剤)を中止し、エルデカルシトールカプセル開始
  • ・レボチロキシンナトリウム錠開始
  • ・服薬時点を1日4回から1日2回へ変更

今回の薬歴

#1 潜在性甲状腺機能低下症の疑い
(入院時)

  • O (転院時フォローアップ依頼書より)潜在性甲状腺機能低下症の疑いあり。TSH、FT4の採血検査依頼。一過性でなければ、治療導入の検討依頼
  • A 診療情報提供書には甲状腺機能に関する記載がなく情報共有が必要
  • P TSH、FT4の採血検査を主治医に提案
(2か月後)
  • O TSH 10.65←8.07 μU/mL(入院時)、FT4 0.88←0.99 ng/mL(入院時)
    レボチロキシンナトリウム水和物錠12.5 μg/日開始
  • A TSH高値継続のため甲状腺ホルモンの補充開始。要継続服用
  • P 患者にレボチロキシンナトリウム水和物の継続服用の重要性を説明

#2 口腔内副作用

  • S 歯痛訴えあり。「退院してから、かかりつけの歯科を受診します。」
  • O アレンドロン酸ナトリウム水和物錠服用中
  • A MRONJに関連する歯痛の可能性や今後の歯科治療によるMRONJ発生リスクあり
  • P エルデカルシトールカプセル0.75 μg/日への変更を主治医に提案
    患者に退院後すぐかかりつけの歯科を受診するよう指導
●薬剤管理サマリー作成し、お薬手帳にも同様の内容を記載
 引き続き、かかりつけ薬局へ情報提供

実務実習生の疑問に答える

Q1 転院時フォローアップ依頼書とは何ですか?

当院と薬剤師間連携を行っている広島市立広島市民病院の病院薬剤師が薬剤管理サマリーをベースにした独自に発行している、薬剤師間連携ツールです。新規開始薬剤や中止薬の情報、薬剤に関連した検査値、有効性、副作用情報などを記載した薬剤サマリーと、フォローアップ依頼内容などが記載されています。

今回、転院時に、転院元(広島市立広島市民病院)の病院薬剤師から「転院時フォローアップ依頼書」を受け、フォローアップ依頼に対応することで、急性期病院では入院期間が短く対応できなかったことを、当院にて治療を継続することができました。医師の診療情報提供書にはない内容を、薬剤師間連携にて薬剤師主導による薬学的介入ができたよい症例です。シームレスな情報共有が重要であることを再認識しました。

Q2 薬剤管理サマリーとは何ですか?

退院後の薬学的ケアを継続するための情報共有ツールとして、入院中の処方内容の変更やその経緯等を病院から薬局に情報提供する際に用いる情報提供文書です。最近では、他の医療機関や介護保険施設、医師や他職種へも活用されてきています。

今回、当院で行った薬学的介入の内容は、「薬剤管理サマリー」や「お薬手帳」を活用し、かかりつけ薬局(かかりつけ薬剤師)へ情報提供することで、急性期病院→慢性期病院→薬局というシームレスな患者情報共有となりました。

寺岡 豊(てらおか ゆたか)
長﨑病院(広島県広島市西区)・薬局。急性期医療と慢性期医療の両方に対応しているケアミックスの中小病院で、介護医療院も院内に併設。入院期間が比較的長いため、ポリファーマシーの解消にも力を入れている。特に、薬剤師間連携の必要性を考え、情報共有のツールとして、薬剤管理サマリーを全ての患者さんに作成し、次へ情報提供できるよう努めている。
病院紹介はこちら
http://www.nagasaki-hp.jp/
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