処方箋上のアリア
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薬剤師が描く薬学ミステリーまんが「処方箋上のアリア」
薬剤師まんが家 三浦えりか先生にインタビュー!(前編)
『月刊!スピリッツ』(小学館・毎月27日発売)で大好評連載中
新感覚“薬学ミステリー”「処方箋上のアリア」
薬局を舞台にしたまんが「処方箋上のアリア」、もう読みましたか? 薬学や薬剤師がリアルに描かれた世界に驚き、共感する薬剤師が続出!
それもそのはず、作者が経験豊富な薬剤師なのです。業界注目のこの作品を描く三浦えりか先生に、制作の裏話をお聞きしました。
三浦えりか先生
秋田県出身、東北医科薬科大学卒業、薬剤師。仙台で病院薬剤師として在職中にまんが家デビュー。約7年で病院退職後上京し、薬局にて派遣薬剤師として勤務。現在はまんが家に専念。
2021年7月12日 小学館「月刊!スピリッツ」で好評連載中の薬学ミステリーまんが「処方箋上のアリア」第2巻を発刊。
作品誕生秘話
- Ph-Port
- 薬剤師が主人公のミステリーというジャンルがとても新鮮で、引き込まれてしまうまんがです。最初に、三浦先生の言葉で簡単にこの作品のご紹介をお願いします。
- 三浦先生
- 薬局を訪れた人たちの問題を解決していく「薬学ミステリー」と私はよんでいます。見るからにちょっと怪しい薬剤師の主人公 麻生葛(あそう・かずら)と、一緒に働く新人おとぼけ薬剤師の浜菱愛莉(はまびし・あいり)が、どう事件を解決していくのかというお話です。
- Ph-Port
- ありがとうございます。薬剤師としてお仕事なさっていたそうですが、ずっと温めていた題材だったのですか?
- 三浦先生
- 私は少女まんが誌でまんが家デビューして、これまでは恋愛まんがを描いてきました。昔からミステリーやサスペンスが好きで、本格的にこのジャンルを描きたいと思って今回、青年誌に場を移したんです。
ただ、薬をトリックに使えるとは思っていましたが、薬剤師のまんがを描くことは考えたことはありませんでした。当初は全然違うお話を考えたんですが、うまく形にならなくて…。もともと薬剤師していたことを話したとき、担当編集さんに「面白い」と言っていただいたので、薬剤師の話になりました。
- Ph-Port
- それは意外です。なぜ薬剤師のまんがは考えなかったのでしょう?
- 三浦先生
- 友達や同僚もほとんど薬剤師で、「世の中の8割は薬剤師」と錯覚するような(笑)環境で何年も過ごしていたので、自分にとってあまりにも日常になっていたんです。まんがに薬剤師のことを描いても、「朝起きて、歯を磨いて、顔を洗って…」というごく当たり前なことを描いているみたいで、面白さはないと思っていたんですよね。担当さんに言われて「え、面白いの?」という感覚で、初めて薬剤師のまんがを考えました。
- Ph-Port
- 薬剤師というテーマを決めたら、スムーズにこのまんがが生まれてきたのですか?
- 三浦先生
- 最初に考えたのは、薬科大生が薬のトリックを見抜いていくような話だったんですよ。でもそれがだめになって、薬局に舞台を移して練り直して、この作品になりました。ミステリーに取りかかってから、1年くらいかかりましたね。
実は主人公は、薬科大生の話を考えたときのキャラクターを移行しました。
このまんがの主人公、薬剤師の麻生葛。口は悪いがキレ者で、訪れる人たちのさまざまな問題を解決していく。
- Ph-Port
- 学生の麻生さんも見たかったです! 彼が物語の舞台になっている「亜理亜薬局」の薬局長ということですが、経営者でもあるのでしょうか。
- 三浦先生
- はい。亜理亜薬局は彼が開局しました。葛は社長であり薬局長です。
主人公は「こんな薬剤師、大丈夫なの?」という独特なキャラクターにしようと思って、気だるげでどこを見ているのかわからないような、アブない感じにしました。キレ者なんですが、口が悪い…これはもう性格ですね(笑)
- 三浦先生
- 目が隠れる長めの髪に白衣のボタンを留めず全開にして、「なんだかヤバそう」というキャラクター性を表現したのですが、「カッコいい」という反響をいただいて、驚いています。たとえば、女性医師がミニスカートにハイヒールで白衣全開であれば、「ヤバい医者だ」と思いますよね。
- 三浦先生
- なのに、葛が普通でないことはあまり気づかれなくて、薬剤師の認知度が高くないことを知りました。始まってみて、もっとフォローが必要だとわかりましたね。薬剤師のイメージを守る責任を感じています。
- Ph-Port
- 一般の方には、「薬剤師のイメージ」が定まっていないのですね…。
薬剤師みんなで認知度を上げていかなくてはなりませんね。亜理亜薬局は、住宅街にひっそり佇む薬局という感じでしょうか?
- 三浦先生
- そうです。クリニックの門前でもなく、どこからの処方箋も受け付ける面対応の薬局というイメージ。開局して1年ちょっとという設定です。
葛がこの薬局を開くまでいたところや、なぜそこで働いていたのかは、過去に関わってくる重要なところです。彼が薬剤師になった経緯や、こんなふうになった背景も過去に「何か」あったからで、少しずつ出していきます。
- 三浦先生
- エピソードは基本的に1話完結になっていますが、葛にまつわるストーリーの大きな流れがあるので、そこも楽しみに読んでいただきたいですね。
従業員の浜菱愛莉の元気な声が響く亜理亜薬局。
第1話で豊富な知識を持つ麻生へ浜菱が問いかける素朴な質問が、ストーリーを貫く大きな伏線!?
- Ph-Port
- もう一人のメインキャラクター、浜菱さんは天然ボケぶりがちょっと危なっかしいですね(笑)
どんなふうに生まれてきたのですか?
- 三浦先生
- 葛に対して、かわいい女の子が必要ということで登場させました。葛の口の悪さをものともしないキャラが必要だったということもあります。それで相性がいい…のか悪いのかわかりませんが(笑)、この天然ボケボケのキャラが生まれた気がします。まだ入ったばかりの新人薬剤師です。繊細な子だったらすぐに辞めていたでしょうね。
- 三浦先生
- 私自身の新人の頃の混乱的な部分も出ているかもしれませんが、描いているうちに発言がどんどんゆるく、ヘンになってきてしまって。「愛莉ちゃん可愛い」と言ってもらえるはずのキャラクターだったのに、読者からは「この子、天然すぎてヤバい」という声が多くて…ヤバいはずの葛が「カッコいい」になって…おかしいな(笑)
愛莉の成長も描いていきたいと思っています。
とにかく元気で明るい愛莉。的外れな言動があっても、薬剤師の仕事には真面目で純粋。
- Ph-Port
- 2人の掛け合いも楽しいです。浜菱さんがポロッと発する鋭い発言にも注目だと思います!
さて、注目といえば、薬や業務に関するちょっとした補足が手書き文字で時々入っているのも気になるところです。
これは薬剤師でもある三浦先生ならではかと思いますが、薬剤師としての遊びやこだわりを教えていただけますか。
- 三浦先生
- このまんがには少しふざけたところもあるんですが、それは私が薬剤師だからできることだと思っています。医療はふざけてはいけない、お堅いイメージを持たれていますが、一息ついた時間に「先生の靴下の色が左右違ってる!」とか、くだらないことで笑っていたりするのが現実です。そういった“はずし”の部分を描けるのは薬剤師ならではかなと思います。
「愛莉のGABAについてのおとぼけ発言が出せたのも、自分が薬剤師だからかも。ほかの人なら、バカにしていると言われそうでためらいますよね」(三浦先生)。
薬剤師でないとおそらく知らない、愛莉がパンフレットを作っている小ネタにも遊び心が。
- 三浦先生
- そして、こだわっているのは、薬の知識に関しては間違いのないようにということです。
変わっていることもあるかもしれないので、自分が知っていることでも改めて確認をして描くようにしています。
第2話のこの構造式も、添付文書を見て間違いのないよう注意しながら一生懸命描いたそう。
後編は、この作品に込めた想いについてお聞きしています。
11月発行の季刊誌「THINK CUBE」No.16(2020 WINTER)には、さらに三浦先生の素顔へ迫るインタビューを掲載! こちらも要チェックです!(インタビュー/2020年9月28日)
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